駄人であるゆえに

物語調であらゆる人間を書くのが好きなのです。
あとは考え事が止まりません。

2016年9月のブログ記事

  • 奇人(4)

    院内で事情を聞かれる内は大抵が上の空だった。早く帰って飯をたらふく食いたいという欲求に思考が支配されていた。大抵の質問を適当に答えると、帰宅の許しが出た。もう中年の事については微塵も興味は無かった。寧ろ、自分の視界でうずくまって誰にも助けられていなかった中年に怒りさえ覚えていた。あの時、行き交って... 続きをみる

  • 奇人(3)

    図書館を出ると、夕日が沈みかけている。あれを見ると空腹に加え、なんとなしに帰路を急ぐ気になってくる。一日を通して、こうも外的な要因に精神を操られるようでは、自分の思考なんてものは空想に過ぎないのではないかという疑惑も湧いてきた。そのような時は決まって、彼の遊びが始まるのである。周囲をキョロキョロと... 続きをみる

  • 奇人(2)

    駅のホームに降り立つと、人間が様々な方向へ散らばっていく。物体が秩序よく大抵が同じ速度で異方向へ移動している事実は、彼を随分面白がらせた。ホームの中心で立ち止まってみても、周りの物体は障害物を避けるかのように運動を続けていく。その様子を観察しながら、自身以外はやはり自動的に動いている創作物である可... 続きをみる

  • 奇人

    彼は、ここ数日、爪先歩きしか行わないという自ら決めた縛りにも飽きてきた様子である。始めた当初は、いつもよりもふくらはぎが疲れる違和感が気に入り、身長が少し伸びたような視界を快感に思ったようである。さらには、正常だとみなされる歩行をしている人間を見て優越感を感じたのである。 その前は、親指と中指で調... 続きをみる